歴史と文化を宿す地に咲くヤブツバキ -弥生の丘(名古屋市緑区)を訪問ー

令和8年3月末、この弥生の丘を管理している加藤さんの元を訪問し、ヤブツバキや園芸品種の視察を行いました。

桶狭間の合戦、織田信長が鳴海城を包囲するために築いた砦の記憶が、今もなお語り継がれる弥生の丘。遡れば、この地からは弥生時代の煮炊きに用いられた土器も発掘されており、まさに「火」と「暮らし」の歴史が幾重にも重なる場所です。

また、弥生の丘には、100年以上の古民家と日本庭園を再生した空間が広がり、日本の伝統的な調理文化を支えた「ムシカマド」の展示・体感施設やギャラリーが整えられています。静謐な庭園、歴史を映す建物、そして火の文化を伝える器具たち。そのすべてが、過去と現在、そして未来をつなぐ舞台となっています。

そのような時間の積み重ねの中で、ヤブツバキは静かに息づいていました。
野に根ざし、風土とともに生きる力強さ。同時に、人の手によって磨かれ、多様な美を見せる園芸品種。自然と人の営み、歴史と文化が交差するこの場所だからこそ、ツバキが「暮らしの記憶」とともに受け継がれてきた存在であることが強く感じられます。

今回の視察は、ヤブツバキの原点を見つめ直すとともに、椿文化の未来を考える機会となりました。

歴史ある大地に見事に咲き誇るツバキ。
その美しさの奥には、時代を越えて紡がれてきた人々の営みが、確かに息づいています。

今後、本協会認定優秀古木の申請などの御相談もいただき、こうして椿仲間が増えていくことも大変嬉しく思います。

                   副会長 金子 雄